作品紹介
1999年の映画「初恋のきた道」は、中国映画の巨匠・張芸謀の作品。主演を務めたのは本作が銀幕デビューとなった女優の章子怡。今でももちろん美しい章子怡ですが、デビュー当時の透き通るような可憐さ、一途に初恋の人を待つ女性を儚くも愛らしく演じていて、思わず目頭が熱くなる…
原題は「我的父親母親(私の父と母)」ですが、邦題の「初恋がきた道」は素晴らしいタイトル付けだと思います。(どんでもない邦題が付いていることもよくありますよね…)他人からしてみるとただ村へと伸びる一本道だけれども、恋する乙女からしてみると、その道を通って愛しい人が帰ってくる、特別なものだったのです。人生の幕を下ろした愛する夫とともに、その道を歩いて帰りたいという母親の切なる願いに寄り添う息子の姿も印象的です。
ちなみに息子役を演じたのは孫紅雷。強面系の俳優さんで、やくざとか警察とか怖そうな役が多いような印象がありますが、バラエティ番組「極限挑戦」への出演をきっかけに、実はとってもチャーミングな一面が話題になりました。(「極限挑戦」は第6シーズンが放送されていますが、孫紅雷はもうレギュラーではありません)
「初恋がきた道」は、現代がモノクロ、父と母の若かりし頃がカラーという描かれ方になっています。現代の息子からしてみると過去パートの部分が、カラーで描かれることによって、両親の思い出がとても美しいものであることが際立ちます。
オススメの中国映画と言われるとほぼ確実に名を連ねてくる本作(日本語字幕がちゃんとある作品という枠内にはなると思いますが)、ステイホームのこの機会に観なおしてみるのもいいかも。
基本情報
邦題:初恋のきた道
原題:我的父親母親
監督:張芸謀チャン・イーモウ
出演:章子怡チャン・ツィイー、孫紅雷スン・ホンレイ、鄭昊
公開日:1999年10月16日
あらすじ
都会で働く駱玉生は、父親の訃報を聞き、村に戻ってきた。すると、母親・招娣が、遺体を担いで村まで連れて戻り埋葬するという伝統的な葬儀にこだわり周囲を困らせていた。村長から相談を受けた駱玉生は母親を説得しようとするが、聞き入れない母親は、葬儀用の布を織り始める。困った駱玉生だったが、両親の若かりし頃の写真を見て、2人の馴れ初めに思いを馳せる…。
主な登場人物
招娣(青年期:章子怡チャン・ツィイー)
村一番の美人。手先が器用。教師として村にやってきた駱長余に恋する。
駱長余(青年期:鄭昊)
師範学校を卒業後、志願して村に教師として赴任してきた。
駱玉生(孫紅雷スン・ホンレイ)
駱長余と招娣の息子。父親の訃報を聞き、都会から村に戻ってきた。遺体を担いで村に持ち帰り埋葬する伝統的な葬儀に拘り周りを困らせる母を、当初は説得しようとする。
ざっくりネタバレ
若き日、村一番の美人と評判だった招娣は、教師として村にやって来た駱長余に恋をする。
招娣は、駱長余の朗読の声を聴くためにわざわざ家から遠い井戸に水を汲みに行ったり、生徒たちを送る道で待っていたりと彼の気を引こうとする。
徐々に距離を縮める2人だったが、招娣が餃子を御馳走すると約束した日、駱長余は急遽街に戻ることになってしまう。長余に振舞うはずだった餃子を青花のお椀に入れて駱長余を必死に追いかける招娣だったが、追いつくことができず、転んだ拍子に青花のお椀を割ってしまう。臘八節(春節を迎える準備を始める日)には戻るという長余の言葉を信じて待ち続ける招娣だが、臘八節を過ぎても長余は戻らなかった。
極寒の中、長余が村への一本道から戻るの毎日待つ招娣はだんだん体調を崩していく。身体の弱った招娣だったが、ついに吹雪の中、長余を探しに村を飛び出す。しかし、途中で倒れ、村に送り返され寝込んでしまう。
2日寝込んだ招娣が目覚めると、長余が戻ってきていた。長余は、招娣の様子を聞いて、耐えきれずこっそり村に戻っきたのだった。この行動のせいで、長余が村に戻る日は数年遅れることになったが、再会の日、招娣は長余が気に入っていた赤い上着を着て、村への一本道から長余が戻るのを待っていた。そしてそれから2人は二度と離れることはなかった。
息子の玉生は、2人の馴れ初めが村への一本道と深い繋がりがあることに気付き、母がこだわる伝統的な葬儀を実施するように村長らを説得した。葬儀の日、長余の教え子たちが各地から村に戻り、代わる代わる棺を担いで村に運んだ。
玉生が村を去る当日の朝、招娣が目覚めると懐かしい朗読の声が聞こえる。招娣が学校へ行くと、玉生が子どもたちを集めて朗読をしていた。それは、長余が初めて村に来た時の授業で朗読していたものだった。招娣は若き日に思いを馳せるのだった。