岩井俊二監督が初めて中国で撮影した中国映画として話題なった「你好、之華」。
岩井監督の小説「ラストレター」の映像化です。
中国での公開当時、ぎりぎりまで出演者が伏せられていたのですが、フタが空いてみたら、周迅、秦昊、胡歌など超豪華出演者で驚いたことを鮮明に覚えています。
中華圏を代表する映画賞である金馬奨にも主演女優賞、助演女優賞などでノミネートされるなど高評価を受けました。
本作が2020年秋に日本公開予定ということが発表されたあと、世界中がコロナ禍に陥り、中国映画も含めて多くの新作映画の公開が延期・未定となりました。この映画も日本での公開自体どうなるかと心配していましたが、無事に公開される運びになり本当に嬉しく思います。
舞台挨拶が実施できない中、オンライン上映会&トークライブという形で、公開日より一足先に「チィファの手紙」を鑑賞できる機会も設けられ、ファンとしてはありがたい限りです。
貴重な内容を記事に残しておこうと思います。
あらすじは中国公開当時の記事がありますのでよろしければ。
作品情報
「チィファの手紙」
原題:你好、之華
英題:Last Letter
監制:陳可辛ピーター・チャン
監督:岩井俊二
脚本:岩井俊二
音楽:岩井俊二
出演:周迅、秦昊、張子楓、胡歌ほか
中国公開日:2018年11月9日
日本公開日:2020年9月11日
日本語字幕監修:岩井俊二
トークライブ
映画上映後、1時間弱のトークライブがありました。ゲストは岩井俊二監督。
かなりたくさんお話をしてくださっていたので、一部内容を抜粋・要約してざっくりメモとして残しておきます。
Q:中国ではポスターに岩井監督の顔写真が出ていましたが?
岩:ラブレターくらいから顔も知られていた様子。ヨーロッパで中国韓国の方に声かけられることが多かった。
Q:中国で映画を撮影したきっかけは?
岩:「スワロウテイル」のときにアジアの国で映画を撮りたいと思っていた。「ラブレター」がヒットして、いろいろな人と話をする中で中国で映画を撮りたいと思った。中国は、ここ10年くらいで音楽活動など接点が増えていた。プロットをピーター・チャンに送ったが、最初は返事がなかった。その後、食事した時にプロットについて聞いてみたらまだ見ていなかった。食事のあとメールを送ったらすぐやろうという話になった。
Q:中国は海外作品の年間公開本数が決まっていると聞くが?
岩:「ラブレター」も実は正式に公開されていなかったので、中国映画を撮れば国内映画として上映されるため、挑戦したいと思っていた。
Q:中国での撮影で苦労した点は?
岩:ローカライズ。中国の日常生活に合わせるための細々した調整。ワークショップ的に俳優さんを呼んで、ネイティブが納得するダイアログに調整したりした。現場でも当初は演出をしていたが、人同士の距離感や、ある場面で日本であれば何か言うところを言わないなどの違いがある。
・郵便局で手紙を出すシーン
・尹川が手紙を何度も持ってくるシーン
→日本では何か世間話を入れがちだが、中国ではない
大枠はそっくりだけど「こんなところで?」というところで食い違う。どう演出したらいいかわからない場面があった。
Q:中国には一人っ子政策などがあるが、撮影時はどうしたか?
岩:原作では之華の子どもの方に弟がいたが、それはまずいと言われた。姉の方に子どもが2人であればOKと言われ、そうした。中国人にはなんとなくわかるようなことではあるが、いらない情報になってしまうので。ローカライズで修正したものは全て良くなった。
Q:キャスティングについて
岩:一番ピーター・チャンと話し合った点。周迅は一緒にやりたいと思っていたのですぐ決まった。
Q:現場の演出指導について
岩:役者は結局同じワールドワイドな作品を見ているので、決定的に違うことはそれほどない。男優、女優の傾向はどの国も一緒。女性はサバサバ、男性のほうが自分を見てほしいという感じが強い。
Q:現場で印象的なエピソード
岩:若い子達はスマホ世代の現代っ子。睦睦役の子は手紙も書いたことなかった。演技になると、若い2人は勘が良かった。お互いの間などを説明しなくてもできる。
Q:周迅は?
岩:サバサバの極地。楽しい人。東京に来日した際、一緒に食事をした。20人くらいの宴席に呼ばれ、「隣に座れ!」みたいな感じ。本当は「隣に座ってください」と言ってくれたと思うけど、感じとしては「隣来いよ」くらいのイメージ。
Q:ラストレターとの違いは?岩:生まれは一緒だけどそれぞれ違う作品という感じ。狙いも違う。
Q:周迅のキャスティングは?
岩:ピーター・チャンのキャンスティングリストにも入っていた。一致していたので、すぐに決まった。
Q:役者とのコミュニケーションは?
岩:主にWechat。日本語で送って中国語で返ってくる。漢字なので見ればなんとなくわかる。英語ができる役者は英語でコミュニケーションしたりした。若い2人は未だに正月の挨拶など送ってきてくれる。
Q:ピーター・チャンについて
岩:香港と中国でもローカライズやアジャスティングなど難しい中で、ピーターは一番成功している。
Q:字幕はラストレターと一致しているものもあったが?
岩:最後のスピーチは、もともと自分が原作で日本で書いたもの。なるべく日本語に近づけるようにした。
Q:中国版のタイトルを「你好、之南」ではなく「之華」にしたのはなぜ?
岩:「之南」だと思った。だが、続編の構想があり、それは「之南」の話でもあるため、「之華」にした。
Q:日本版のほうがコミカル、中国版はシリアスな印象があるが?
岩:笑うシーンは厳しいルールが設けていて、やってみて自分が面白いものであればやる。中国で受けるものが自分にはわからないものがあったので、そういうシーンが減ったのかもしれない。
Q:続編について
岩:映画の中に出てくる本はちゃんと中身がある。それだけで1本撮れる原案がある。今はコロナで中国に行けずもどかしい。