サイトアイコン CHINA BLUE HUALAN

賈樟柯プロデュース白客主演映画「不止不休」第21回東京フィルメックスで上映【あらすじ】【ネタバレ】

第21回東京フィルメックスで「不止不休」が上映されました。「不止不休」は、第77回ヴェネチア国際映画祭と第45回トロント国際映画祭にノミネートされた作品。記者となった若者が、B型肝炎患者を追う中で法の順守とモラルの狭間で葛藤します。

実在の記者韓福東をモデルとしていて、劇中のあるシーンで「記者はこうあるべき」という台詞を韓東に対して告げる記者役で出演しています。音楽は半野善弘氏。繊細なピアノの旋律がとても映画に合っていて印象的でした。11月1日の上映会場にもいらしていました。

本作は、来年2021年にロングライト配給で日本でも公開予定です。個人的には、とても分かりやすく観やすい映画でとても良かったと思います。上映後行われた王晶監督のQ&Aによると、白客のキャスティングは決まっていたそうで、白客のイメージにぴったりだったそう。普通の若者感で出ていてすごく説得力がありました。

「新聞記者」「我不是薬神」などに感銘を受けた方は是非鑑賞をおすすめします。来年の公開を楽しみに待ちましょう!

作品情報

原題:不止不休
英題:The Best Is Yet To Come
監制:賈樟柯
監督:王晶
出演:白客、苗苗、張頌文、宋洋、王奕権、周野芒、賈樟柯、秦海璐、福克斯ほか
上映時間:115分
中国公開日:未定
日本公開日:2021年

あらすじ

2003年、学歴も金もコネもない若者韓東は恋人の小竹を連れて田舎を離れ北京で仕事を探していた。同郷出身の張博も北京で大学院進学を目指し受験勉強に励んでいた。韓東は新聞社に寄稿の原稿料を取りに行ったことをきっかけに、敏腕記者黄江のもとで実習生として働くことになる。記者として着実に成長していく韓東は、B型肝炎患者らの違法な替え玉検診追い始め、患者たちへ向けられる差別の実情を知り葛藤する。

主な登場人物

韓東(白客)

黄江のもとで記者として働き始める若者。田舎から出てきた漂北で、苦しい生活をしている。中卒で学歴差別を受けている。

小竹(苗苗)

韓東の恋人で同郷の出身。怪しげなマネキン業者で働いている。

張博(宋洋)

韓東と同郷出身の同級生。北京に来たばかりの頃は韓東と地下の安部屋で同居もしていた。大学院進学を目指し受験勉強をしている。

黄江(張頌文)

新聞社の敏腕記者。ネット掲示板に上がっていた韓東の投稿を読んでおり、韓東を評価し、実習生として採用した。

ネタバレ

2003年、田舎から北京に出てきた漂北族(※1)で中卒で学歴も職歴もない青年韓東は、記者の仕事を探すものの学歴差別を受け就職できずにいた。ある日新聞社に寄稿の原稿料を取りに行った際、郊外の炭鉱場での公害問題を取材する記者黄江と出会う。黄江に誘われ実習生として新聞社で働き始めた韓東は、黄江とともに炭鉱の公害問題の取材を進め、その記事で月間賞を受賞し評価される。

(※北漂:北京の戸籍がなく、他地域から来て、北京で仕事をし生活している人々のこと。)

街で血液販売の名刺をもらった韓東は、血液販売の現場へ潜入し、その場でB型肝炎患者の替え玉検診(※2)が行われていることを知る。

(※中国ではB型肝炎患者は、仕事・婚姻・進学など各方面で差別を受けていた。そのため、定期検診などで替え玉検診をし、差別を回避するという違法行為が行われていた。肝炎の感染経路は、血液感染、母子感染、性交渉の3つで、一時的接触で感染することはないが、正しい認識がなされておらず差別につながっていた。)

潜入調査をする中で、同級生の張博も替え玉検診していたことを韓東は知る。張博はB型肝炎のキャリアであることを理由に中学のころ転校したこと、仕事も見つからず大学院の試験にも受からないという現実を韓東に突きつけ、韓東はB型肝炎患者が受ける差別の現実を知る。韓東は一面に決まっていた替え玉検診の記事を取り下げようとする。記者に必要な冷静さと理性を持つ韓東を評価したという黄江は、患者に同情するなと忠告する。しかし、韓東は記事取り下げを決め、会社を辞める。そして、小竹と住むはずだった家からも追い出され路頭に迷う。

翌日にはテレビでも替え玉検診が報道され、韓東が潜入していた彪のもとにも捜査が入っていた。張博は替え玉検診のことが大学にバレて、大学院の一次試験の合格を取り消され、田舎に帰ることを決めていた。

替え玉検診をしていた医者の姚医師を訪ねた韓東は彪の娘の七喜が肝炎患者であると知る。何度も断ったが、幼稚園に通いたいと七喜に懇願され、心が痛み替え玉検診をしてしまったこと、それからは断れずに替え玉検診を続けていたと告白する。

韓東は彪のもとを訪ね、このままで良いのかと説得しようとする。追い返されるものの、自分自身も学歴がないことで差別をされてきたことを彪らに投げかける。すると、その中の元バイオリン奏者の患者の若者が、B型肝炎患者のインタビューに協力してくれることになった。
B型肝炎患者へのインタビューをまとめ上げた韓東は、「反差別1億人の叫び」という原稿を黄江に”お別れの挨拶”としてメールで送信する。

翌日ネット代や宿の支払いをしているとパソコンにB型肝炎患者からの連絡が殺到する。その日の一面には韓東が黄江に送った原稿が一面の下部に掲載されていたのだった。

王晶監督Q&A

11月1日上映回後、オンラインで王晶監督へのQ&Aが実施されました。一部要約したメモを残しておきます。

Q:韓福東を題材にしたきっかけは何ですか?
王晶:電影学院卒業後、初監督作品をどうするか考えていた。一番撮りたかったのは、社会派作品。中国は大きく人口も多い国で、社会でたくさんのことが発生している。社会的に目を向けて作品にしたいと思い、韓福東の話を聞いて、新聞記者・ジャーナリストの視点で作品を撮ることがつながった。

Q:白客をキャスティングしたのはなぜ?
王晶:脚本を書いていて普通の人のイメージの人をキャスティングしたく、白客が頭に浮かんでいた。これまでの出演作から普通の人のイメージがあった。白客のモノクロ写真を見た時に、韓東のイメージにぴったりだった。

Q:今の北京は様変わりしていて撮影が大変だったのではないか?
王晶:新聞社の中などはスタジオなどでコントロールができた。北京の街並みは再現が難しく、別の都市で撮影しようとした。しかし、やはり北京でないと撮影ができないと思った。

Q:リアリズムニに徹した作品だが、鉛筆や新聞が浮くシーンの意図はなにか?
王晶:ある時ふと思いついた演出だった。そして2003年の重要な出来事、SARSと中国初の有人宇宙飛行に成功した楊利偉のニュースがあった。楊利偉の夢と同じように韓東のペンが飛んでもいいと考えた。観客によっても様々な解釈がある。

Q:映画自体はコロナ前に撮影されたのか?
王晶:去年の11月ごろから春節あたりまで撮影をしていた。しかし、編集作業や、半野さんとの音楽に関するやりとりなどはリモートだった。

モバイルバージョンを終了