朝鮮戦争勃発70周年とのことで公開された映画「金剛川」、中国の著名監督管虎、郭帆、路陽の3人が集結し制作されました。管虎と言えば、8月に公開され大ヒットを記録した戦争映画「八佰」が記憶に新しいですね。主演の張譯と李九霄は「八佰」にも出演していて、とてもいい演技を披露していました。
「八佰」はコロナが落ち着いたかと思われた8月に公開され、中国国内では30億元を超える大ヒット。先日発表された2020年の世界映画興行収入ランキングで堂々の第1位。そして「金剛川」も10億元を突破し、同ランキングで第10位にランクインしています。中国映画史上10億元突破は78作品目だそうです。中国映画は、第3位に「我和我的祖国(愛しの故郷)」、第8位に「姜子牙」がランクインと4作がトップ10入り。ちなみに日本一の男煉獄さんの映画「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」は第5位でした。
「八佰」は定番の“技術上の問題”で当初の公開予定から延期され、満を持しての公開でしたが、「金剛川」はなんだか急に出てきた印象…主演者はかなり豪華なのに…それもそのはず。「金剛川」は公開2ヶ月前の8月にクランクインして9月中旬にクランクアップしたばかりの出来たてほやほやの映画でした。すごい勢いで制作→公開となったので、急に見えたんですね。
朝鮮戦争は中国では“抗美援朝”戦争と言われており、「金剛川」は対アメリカのいわゆるプロパガンダ映画なんですよね。制作から公開までが非常にスピーディーだったのは、中米関係によるもの…なんて話も出ていました。
「金剛川」の中身の話ですが、舞台は北朝鮮にある金剛川にかかる橋。アメリカ軍の爆撃機に何度も橋を爆破されながらも、そのたびに橋を修復し、前線の金城に兵士を送るべく志願兵たちが奮闘するというのが大筋です。
映画は4つのパートに分かれており、それぞれ「士兵」「対手」「高炮班」「橋」とタイトルがついています。7月13日の午後から翌日早朝5時までの橋の様子が、各パート異なる視点で描かれ、クライマックスを迎えるという構成です。視点は異なりますが、発生する出来事は同じなので、重複するシーンが多いように感じます。サスペンスだと伏線を回収して「そうだったのか!」という驚きがある構成だと思いますが、「金剛川」は戦争映画。伏線と言うほどの仕掛けはないのでくり返しに観えてしまうんです。
映画全体を通して描かれているのは、志願兵たちの自己犠牲の精神。それはまさに本作の英題「The Sacrifice」というわけです。そしてそれぞれメインの登場人物はいるものの、真の主人公は金剛川にかかる橋なんですよね。
それでもメイン俳優張譯の視点のパートはやっぱり良かったと思います。張譯が泥まみれになっているとどうしても心揺さぶられてしまう…そして私の推し李九霄も良かった~。これからもっと活躍してほしいです。
目次
作品情報
原題:金剛川
英題: The Sacrifice
監督:管虎、郭帆、路陽
脚本:管虎
出演:張譯、呉京、李九霄、魏晨、鄧超、欧豪ほか
中国公開日:2020年10月23日
あらすじ
朝鮮戦争末期の1953年7月12日、志願軍の兵士たちは金城での最後の一戦に参戦すべく金剛川を渡ろうとしていた。金城の戦いに参戦するためには13日の早朝5時までには金剛川を渡らねばならない。志願軍兵らは金剛川にかかる木造の橋を修理し、兵士たちを対岸へ渡そうとするも、アメリカ軍の爆撃機B29が橋を破壊し、志願軍兵たちの行手を阻む。しかし、志願兵軍たちは橋が破壊されるたびに数時間という短い時間で何度も橋を直すのだった。
主な登場人物
※【請注意】ネタバレを含みます。
張飛(張譯)
パート3「高炮兵」の中心人物。砲兵小隊長で、関磊の弟分。関磊により後方の砲台担当を言い渡される。関磊が犠牲になった後、彼らの遺体を山に埋葬する。超飛は橋を守るため、米軍爆撃機の注意を引くため、砲台の周囲に火を放ち迎え撃つ。しかし爆撃を受け部下たちは全員犠牲になり、自身も片腕片足を失う。それでも爆撃機を撃つ落とすべく、関磊がいた砲台に向かい、残りの手足だけで砲台を動かし、彼らを苦しめた爆撃機を撃ち落とすことに成功する。直後もう一機の米軍機の爆撃を受け犠牲となる。
関磊(呉京)
砲兵中隊長。張飛の師匠的立場だが2人はいつも言い争いばかりしている。戦場で煙草を吸ったことが発覚し降格させられた。砲撃しやすいが場所が敵に分かりやすいという危険な地点から砲撃を行う。残りの弾頭が少ない中だったが、米軍の爆撃機を1機撃ち落とすも、銃弾を受け犠牲となる。張飛が遺体を埋葬したが、原型はほとんど留めていなかった。
劉浩(李九霄)
第1パート「士兵」の中心人物。歩兵小隊長。四川出身。戦死した戦友のために勲章をもらうため手柄を立てようとしている。夜間は高台から橋の様子を注視し、敵機襲来を警戒していた。対岸の張飛ら砲兵とアメリカ軍爆撃機の戦いを見て一念発起、銃を持ち対岸の砲兵らの支援に向かおうとするが、川に沈んでいた時限爆弾が目の前で爆発し、上官の高福来や同郷の女性通信兵が犠牲になってしまう。それでも再び橋を修復しようと木材を運ぼうとするが、アメリカ軍の爆撃で犠牲となる。
高福来(鄧超)
歩兵中隊長。江西出身。冷静な人物だが、勇気と責任感溢れる熱血的な軍人。橋の修復という軍命を遂行するが、最期は爆撃に巻き込まれ犠牲となる。
ネタバレ
1. 士兵
視点:劉浩(李九霄)
四川出身の士兵劉浩は、犠牲になった戦友の写真を大事に持ち、彼らのために勲章をもらいたいと思っていた。戦場には、同郷出身の女性通信兵がおり、劉浩は彼女のことが少し気になっている様子だった。偵察機の爆撃を受けながらも生き延びた劉浩は、夜間橋全体の監視を行う任務についていた。対岸で米軍爆撃機と懸命に対峙する砲兵たちを見て自身も支援に向かうため橋を渡ろうとする。その際、橋は爆撃を受け、上官の高福来や女性通信兵が犠牲になるのを目の前で見る。劉浩は橋を修復すべく木材を持って橋に向かうが、そこで大規模な爆撃を受け犠牲となる。(第4パート冒頭、橋の前に立ったまま炭化しているのは劉浩。)
2.対手
視点:米軍パイロット
7月13日午後、米軍パイロットのヒルは金剛川にかかる橋の爆破任務に向かっていた。爆破してもすぐに修復される橋を徹底的に破壊するため、ヒルは何度も金剛川の橋を攻撃する。砲台の攻撃を受け自身も重傷を負うも、軍の命令を無視して金剛川の破壊に向かった。最後ヒルは張飛の砲撃が直撃し墜落する。
3.高炮班
視点:張飛(張譯)
砲兵の関磊と張飛は師弟関係。いつも言い争いばかりしているが、張飛は、戦場で煙草を吸っていたために降格させられた師匠関磊を気にかけ、煙草を吸わせないように煙草の葉が入った缶を隠す。しかし、関磊は米軍爆撃機の攻撃を受け犠牲となり、遺体は原型を留めていなかった。張飛は関磊らを山に埋葬し、再び砲台に戻る。砲台の周囲に火を放ち、爆撃機と対峙する。しかし、砲兵らは次々と攻撃され、最後に残った張飛も片手片足を失った。それでも、張飛は関磊がいた砲台に杖をついて移動し、最後の攻撃を仕掛け、爆撃機を撃ち落とすのだった。
4.橋
夜明け、米軍の大型機の爆撃を受け、徹底的に橋は徹底的に破壊された。金城に向かうため、大部隊は早朝5時までに橋を渡らねばならない。大部隊を金城に送るため、志願兵たちは壊れた橋に向かい、「人橋」となって橋を支え、大部隊を対岸に渡らせた。その様子を見た米軍爆撃機のパイロットは爆撃を浴びせながらも「彼らを止めることはできない」と呟くのだった。