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奇妙な家族の正体は…映画「秘密訪客」【あらすじ】【ネタバレ】【解説】

映画「秘密訪客」は、明らかにおかしい4人家族と、地下室で暮らす家族ではない男の奇妙な共同生活を描いたミステリ作品です。緻密に散りばめられた伏線が、後半で一気に回収されていく様が見事で、奇妙な家族の正体に思わず身震いしてしまいます。

家長である汪氏を演じたのは、香港のトップスター郭富城アーロン・クォック。いや〜格好いいですよね。怪しげな雰囲気も色気もすごい。

対する謎の客人を演じているのは中国を代表する国際的映画俳優の段奕宏。段奕宏は脚本を選ぶタイプの俳優さんなので、彼が出演しているだけで面白さお墨付きでしょう。

子役には、張子楓と栄梓杉の2人。ふたりとも既に代表作がある人気俳優ですよね。
張子楓は岩井俊二監督の「你好、之華」で若くして金馬奨助演女優賞にノミネートされた実績があります。2021年6月に公開された「我的姐姐」でも高い評価を得ているようです。バラエティ番組「向往的生活」での愛らしい妹分として姿も良いですよね。

栄梓杉は、社会現象を巻き起こしたドラマ「隠秘的角落」の主人公朱朝陽を演じた俳優です。「秘密訪客」の撮影時期は2018年で、「隠秘的角落」より前なので、少し幼い印象が残っていますね。「秘密訪客」には、普普役の王聖迪も出ていたんですよね〜。

伏線だらけのミステリが好きな方にはおすすめの作品です。

作品情報

原題:秘密訪客
英題:HOME SWEET HOME
監督:陈正道
腳本:殳俏
出演:郭富城 、段奕宏 、張子楓 、許瑋甯 、栄梓杉
上映時間:111分
中国公開日:2021年5月1日

あらすじ

バスの転落事故を起こし怪我を負った男がいた。男は于困樵、汪家の地下室に匿われ3年になるという。汪家は汪氏、妻、楚瞳、楚褀の4人家族のようだがどこか様子がおかしい。徐々に家族の秘密が明らかになっていく…。

主な登場人物

汪氏(郭富城)

豪邸に住む汪家の家長。

汪氏の妻(許瑋甯)

美しい妻。いつも豪華な料理を準備している。

汪楚瞳(張子楓)

汪家の長女。絵を描くのが得意。

汪楚祺(栄梓杉)

汪家の長男。楚瞳の弟。転落事故の生き残りで、足に障害が残った。

于困樵(段奕宏)

汪家の地下室に住む客人。転落事故を起こしたバスの運転手。

相関図

ネタバレ

バスの転落事故を起こし怪我を負った男がいた。男は于困樵、汪家の地下室に匿われ3年になるという。汪家は汪氏、妻、楚瞳、楚褀の4人家族のようだが、汪氏がすべてを支配しているようで、どこか様子がおかしかった。

3年前、バスの転落事故を起こした困樵は、自身も怪我を負いながらも楚褀を助けた。楚褀の父である汪氏に通報すると言われた困樵は、バスを崖のそばに停車したのは楚褀の指示だったと言う。楚褀に責任が及ぶのを恐れた汪夫妻は地下室に困樵を匿うことにしたのだった。

楚瞳はこっそり地下室へ向かい、困樵にデッサンを見せていた。その姿を見ていた楚褀は楚瞳に「父親に言いつける」と言うが、逆に「いじめられていた奴らが全員死んで嬉しかったくせに」と返され言葉に詰まってしまう。下校途中の楚瞳に母の不倫相手らしい男が接触し、家から脱出する協力を頼んでくる。母は妊娠していると言う。その場に現れた楚褀とともに帰宅する。深夜、家を出ようとしていた母を見かけた楚瞳は「出て行くなら行けばいい」と告げた。翌朝、母はいつも通りに朝食の準備をしていた。汪氏は母を翌朝病院に連れて行くという。

夜、于困樵はバス転落事故の夢をみていた。100元を受け取り靴の紐を結ばなければ楚褀がいじめられると分かった困樵は言うとおりにした。その時トラックがバスに衝突し、バスは子どもたちを乗せたまま崖から転落した。目覚めると、楚瞳が靴の紐を結んでほしいと現れる。様子がおかしい楚瞳を止めたのは楚褀だった。

翌日の昼間は誰も家にいなかったので、楚瞳は困樵を上の階へと連れ出す。楚瞳は、汪氏は元々写真家でありRoyという同僚がいたこと、家の中に飾られている写真はすべてRoyの作品であること、家業を継ぐように言われ写真の道を諦めたことを話した。困樵が地下室に戻ると、上から楚瞳の悲鳴が聞こえる。慌てて上へと駆け上がると、汪氏らが戻ってきており、楚瞳は足に火傷のような怪我を負っていた。家族は困樵の仕業と思い、楚瞳も何故かそれを否定しなかった。

夜になると汪氏の妻が困樵を呼びつける。その姿は血だらけで、物音で家族が起きてくる。妻は「このえ家はおかしい、路路を見た」と叫ぶ。汪氏は起こった様子で全員に部屋に戻るよう告げた。

翌日、楚瞳は楚褀を連れて写生に出かけようとする。汪氏は、楚褀ではなく困樵を連れて行くように命じる。2人が出掛けた後、汪氏は書斎へ、妻は楚褀を連れて食料庫へ向かう。すると妻は楚褀を閉じ込めてしまう。写生に向かった楚瞳は困樵に「あの家はおかしい、家には戻らず橋渡り逃げよう」と告げる。困樵はそんな楚瞳に「彼女は君の母親じゃない、路路の母親だ」と言う。

汪氏が閉じ込められていた楚褀に気づき助けると、母親は汪氏の書斎に入り、カメラを破壊していた。半狂乱の母親は「楚褀の眼は灰色」だと言い、汪氏が写った写真を破り捨てた。

楚瞳と困樵が家に戻ると、家族が食卓に集まっていた。汪氏は、母に向かって“暁雪”と呼びかけると楚瞳は「母の名を呼ぶな」と言う。そう、この家族は本来無縁である人間たちの集まりだった。それが暴露されてもなお、家族を続けていこうという汪氏の背中を楚瞳がナイフで刺してしまう。警察に連行されそれぞれに取り調べを受ける中で、家族の正体が明らかになる。

前妻の娘汪楚瞳、バス転落事故の被害者潘晨路の母親、養子として迎えた陳小斉、そしてバスの運転手于困樵。事件後の裁判で于困樵は無罪となっていた。その裁判の場で、汪氏と潘晨路の母親は出会い、連絡先を渡される。彼女は潘氏集団の社長の愛人で、娘の潘晨路が死んだことで頼りの養育費が得られなくなったのだと言う。次に接触してきたのは自己の生き残り陳小斉の父親だった。経営する工場を売っても障害が残った小斉を養う金がないと言う。汪氏は陳小斉を養子に迎え、汪楚祺と改名させた。汪氏らが控訴しても事故の判決は覆らなかった。そして、汪氏は奇妙な家族を作り上げ、于困樵を病院から引き取り、自らの手で于困樵を罪と向かい合わせ自首させようとしていたのだった。こうして奇妙な“家族”の共同生活は終わりを告げた。

解説

本作の中で最も狂気的な人物は、どう見ても奇妙な家族を作り上げ、それを維持し続けようとした汪氏ですよね。しかしながら、私は汪氏の行動の全容が一度の視聴で理解しきれず…鑑賞後に色々と調べたり、あらためて見直してみたりしました。ほとんどの伏線が集約されてくると思うので、解説として書き記しておこうと思います。

汪氏とRoyと張暁雪

汪氏とRoyは写真家としての仲間で、張暁雪は彼らのモデルとして良い友人関係を築いていまいした。しかし、汪氏が家業を継ぐために写真事務所を閉じた時、Royは姿を消してしまいました。汪氏は実家が決めた女性と結婚するのが嫌で、父親に家業を継ぐ条件として「自分の知らない女性ととの結婚を無理強いしない」と約束させたと言います。それを聞いたシングルマザーの暁雪は、汪氏t結婚する提案をします。結婚式の場で暁雪は、「彼の1番はカメラだと分かっている、2番目になれたら良い」と言い、。汪氏はそんな暁雪に「君が良いのなら子供を作ろう」と言います。そして、生まれた子供の眼の色は灰色だったわけです。そして暁雪は自殺してしまいます。

これはつまり、汪氏とRoyが親密な関係で、暁雪に産ませた子供楚祺はどこかしらで保管していたであろうRoyのものを使って作らせたと言うことでしょう。Royは外国人と明言されていますし、暁雪と汪氏の子供であればアジア系なわけですから。子供が産まれてそのことを知った暁雪は、自ら死を選んだのです。

汪氏と張暁雪との息子、本物の汪楚褀

汪楚祺として生活していたのは、転落事故で于困樵とともに生き残った陳小斉でした。小斉は本物の楚祺からいじめを受けており、事故当日のバスの中でもからかわれ、于困樵に靴紐を結ばせるようにという命令を下されていました。結果として、そのいじめが2人の命を救うことになったわけですが。本物の楚祺は前述の通り、灰色の目を持つ混血児、そして父親である汪氏とカメラで遊ぶ少年でした。汪氏は自分の元を去ったRoyの遺伝子を受け継ぐ楚祺を何よりも大事に思っていたことが伺えます。なので、小斉の名前もわざわざ楚祺に変えさせたのでしょう。そのおかげで観客は楚祺は本物だとすっかりと騙されてしまうのです。

物語の一番最後は、楚瞳のモノローグで終わります。彼女は、小斉にこれからも家族でいてほしいと語りかけているのです。そしてラストシーンは、汪家に入ろうとする于困樵。奇妙な家族は、本当の家族をやり直そうとしているのでは、という結末でした。そこに誰がいるかは分からないけれど。

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