【舞台挨拶インタビューあり】徐崢主演映画「我不是薬神」あらすじ&ネタバレ
2018年を代表する中国映画と言えばこの映画、「我不是薬神」。10月26日、2018東京中国映画週間のクロージング作品として日本初上映が行われました。監督は85年生まれの文牧野、主演は囧途シリーズでお馴染みの徐崢が務め、周一圍、王伝君、譚卓、章宇、楊新鳴ら豪華俳優陣が出演。本作は、中国で実際に起ったジェネリック薬品の密輸入事件(通称、陸勇事件)を題材に制作され、7月6日に中国にて正式公開され、国内での観客動員数が9000万人を超えるヒット作となりました。
閉幕式での上映直前には、主演の徐崢とプロデューサー劉瑞芳による舞台挨拶が行われました。徐崢は「言いたいことはたくさんあるけれど、まだ皆さん映画を観ていないので、とにかくまず映画を観て楽しんでほしい。早く観てほしい。」とコメント。また、今回は出品が間に合わなかった東京国際映画祭コンペティション部門についても、「また別の作品で是非参加したい。本作が日本でも正式公開になってほしい。」と意欲を示しました。
本作は、2018東京中国映画週間の最終日に発表されたゴールドクレイン賞でも、審査員特別賞と特別映画貢献賞を授賞。また、台湾で毎年11月に授賞式が開催される中華圏の伝統的映画賞「金馬奨」でも、主演男優賞をはじめ複数部門にノミネートされており、非常に高い評価を受けています。
物語の前半はさすが徐崢という感じで、主人公たちが偽薬で成り上がっていく様子がコメディのように描かれています。しかし、利益ではなく病気の人々のために主人公が再び密輸に手を染める決心をする後半部分から、社会に疑問を投げかけるような展開になっていきます。そして、最後は思わず涙…個々の演技も素晴らしく、見ごたえある作品に仕上がっています。
11月9日から、中国の各種動画配信サイトの有料会員向けに配信もスタートしていますので、是非チェックしてみてください。
目次
基本情報
タイトル:我不是药神
英題:Dying To Survive
邦題:ニセ薬じゃない!
監督:文牧野
公開日:2018年7月6日
登場人物
程勇:徐峥
インドの強壮剤輸入店の経営者。別れた妻との間に息子が一人いる。父親の入院費や家賃も払えないほど生活は苦しい。刑事の曹斌は別れた妻の弟。
呂受益(吕受益):网传君
程勇に偽薬密輸を頼んだ人物。白血病患者。妻と生まれたばかりの子供の3人家族。
彭浩:章宇
田舎から出てきた金髪の不良少年。白血病患者。食肉加工工場でアルバイトをしている。偽薬を程勇から強奪したことで、彼らの仲間に加わる。ニックネームは黄毛。
刘思慧(劉思慧):谭卓
白血病患者が集まる掲示板の運営者。ストリップバーの人気ダンサー。白血病の一人娘をもつシングルマザー。
刘牧师(劉牧師):杨新鸣
教会の牧師。白血病患者。英語力を買われ、程勇らの仲間に加わる。
曹斌:周一围
偽薬事件を追う刑事。程勇の別れた妻の弟。
あらすじ
インドの強壮薬の輸入販売店を営む程勇は、店の家賃も病気の父親の入院費の支払もままならずにいた。そんな程勇の元に、中国では輸入が禁止されているインドのジェネリック薬品を密輸していほしいと白血病患者の呂受益が訪ねてくる。密輸は危険だと一度は断る程勇だったが、大金を手にするため、呂の申し出を受け、密輸に手を染めることとなる。呂ら白血病患者の命の綱である薬の正規品はドイツ製1瓶3万元と非常に高額で、一般市民が継続して服用することが厳しいものであった。呂はインド製のジェネリック薬品が全く同じ薬効で安価なことを知り、程勇に密輸を頼んだのであった。
インドの供給元と代理店契約を結び、更に安価で大量にジェネリック薬を仕入れるため、程勇と呂は、英語ができる牧師の劉、白血病患者の掲示板を運営する劉思慧、バイト暮らしの若者の彭浩を仲間に引き入れ、ジェネリック薬で大きな利益を上げることに成功する。その頃、張長林という人物も偽薬の販売を始めていた。張は程勇らが”同業者”であることを突き止め、程勇に販売ルートを譲るように持ちかけた。逮捕されることを怖れた程勇は、一方的に密輸を止めることと張が販売ルートを引き継ぐことを告げ、仲間たちと決別する。1年後、小さな繊維工場を営む程勇の元に呂の妻が現れ…。
結末ネタバレ
呂の妻によると、張は薬の値段を吊り上げたため、警察に目をつけられ、薬の販売が停止されてしまったという。薬がなくなった呂は自殺未遂を起こし、入院しているという。1年ぶりに程勇が呂に会いに行くと、辛い治療に苦しむ呂がいた。程勇はかつての仲間に声をかけ、一度閉じてしまった販路に再度アプローチし偽薬密輸を再開する。妻と子供のためにも生きたいと願っていた呂であったが、治療の辛さ、家族への思いから病院のトイレで自殺し、この世を去ってしまう。程勇は、貧困と治療に苦しむ患者たちのため、利益を度外視して1瓶500元で販売することを決意する。しかし、再び出回った偽薬に警察も目を付ける。逃亡を続けていた張長林も逮捕され、薬を購入していた白血病患者らも警察に連行された。偽薬案件を追う刑事・は、「正規品は高すぎて買えない、この薬がなくなったら自分たちは死を待つだけ。自分たちはまだ生きたい。今出回っている薬に利益なんかない。」と言う白血病患者らを前に、自身の捜査が正しいのか疑問を持ち、偽薬案件から降りる。
インドでも薬が生産停止の事態に陥ってしまう。インドの小売店から買い戻し、何とか仕入れは確保したが、従来の価格では販売が難しくなった。それでも程勇は1瓶500元のまま販売し続けた。しかし、ある日、コンテナ置き場でいつものように偽薬を車に積み込んでいると、彭浩が警察が来ているのに気付く。以前、荷物を保安官に見られたことがあり、ニュースで偽薬を見た保安官が通報したのであった。彭浩は、程勇と薬を守るため、一人で車に乗り込み逃亡しょうとする。しかし、コンテナ置き場から出たところでトラックと衝突し、彭浩は20歳の若さでこの世を去ってしまう。失意の中、それでも偽薬を販売する程勇であったが、ついに密売の現場を押さえられ逮捕される。
裁判の結果、密輸の動機が純粋な人助けであると情状酌量が認められ、5年の実刑判決を受けた。裁判所から護送される程勇を、多くの白血病患者らが見送った。程勇は、その群衆の中に亡くなった呂と彭浩の2人が笑顔で立っているのを見たのだった。
3年後、程勇は模範囚として5年の刑期を待たず釈放された。
舞台挨拶:徐崢インタビュー
Q:本作はどのような映画か?どのような点が観客の心を打つのでしょうか?
徐:本作は現実に起こった事件を題材に作った映画です。実際の人物は本人も白血病患者でしたが、この映画の主人公は白血病ではありません。観客を感動させた部分は、下層社会に生きる人物を描いたのですが、物語を通して最後は英雄になったという点だと思います。
時間的な問題や様々な原因で東京国際映画祭コンペティション部門への出品を逃してしまったことが残念です。この作品ならコンペティションに参加できたと思っています。今後、別の作品でまた東京国際映画祭に参加したいです。
本作は医薬品という社会性の高いテーマを取り上げていたこともあり、上映後大きな反響がありました。李克強首相も映画に触れたこともあり、医療業界の改革や政策にも影響を与えたと思っています。
今回の上映は第一歩ですので、日本でも正式公開になり多くの方に観ていただけたらと思っています。
Q:印象的なシーンや苦労したシーンはありますか?
徐:上映後であればいろいろと話したい事があるのですが、上映前ですのでまずは映画を見てもらえたらと思います。