映画「大象席地而坐(邦題:象は静かに座っている)」が東京フィルメックスで上映!あらすじ紹介
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作品紹介
映画「大象席地而坐(邦題:象が静かに座っている)」は、胡波(ペンネーム胡遷)が監督を務めた作品で、章宇、彭昱暢、王玉雯、李从喜ら出演。2018年2月16日、第68回ベルリン国際映画でワールドプレミア上映され、国際批評家連盟賞を獲得している。
本作は胡波の同名短編小説を原作として、河北の小さな町を舞台に、下層社会で人生の苦境に陥った4人が自身の人生を打開しようもがく物語。監督の胡波は230分にもおよぶ本作を完成させてすぐ、自ら命を絶ってしまった。
本作は中華圏の伝統的映画賞である台湾「金馬奨」でも注目されており、彭昱暢が最年少24歳で主演男優賞、胡波が新人監督賞、脚色賞および作品賞にノミネート。11月16日に開催された授賞式で、脚色賞と作品賞に輝いた。
物語のモチーフは、日本で言うところの「鎖でつながれた象」だろう。自身を取り囲む環境から脱出しようとしてできないのか、それとも打開できるのか。中心人物である4人はとにかくどん底の人生で、その人生や生活から脱出したいと思ってる。しかし、今ある境遇を人のせいにしたり、環境のせいにしたりしている。そんな登場人物たちの表情や動きが綿密に描かれている。約4時間の上演時間でも、目を離す瞬間がない。最初は別々に始まるそれぞれの中心人物の生活が、物語が進むにつれ、少しずつ少しずつ絡み合う。その場面のメインの人物にピントが合わせられ、その人物の後を追うようなカメラワークが印象的だ。その場面の中心人物以外は、ぼやけた状態で映し出され、視界も非常に狭い。徐々にピントが合っていくような合わないような映し方が大部分。その画面が中心人物たちの抱く閉塞感や息苦しさ、周囲を見ようとしない孤独な心情を表しているようだ。
主演を務めた彭昱暢は、普段の愛らしい雰囲気を徹底的に封印し、終始暗い表情を浮かべている。8月に公開された「快把我哥帯走」とは全く正反対の姿に、彼の実力を見せつけられる。また、章宇も危なげな色気を持つ于成を見事に演じている。若手実力派俳優2人の共演を、是非多くのスクリーンで観られることを願っている。
基本情報
タイトル:大象席地而坐
邦題:象は静かに座っている
英題:An Elephant Sitting Still
監督:胡波
公開日:未定
(ベルリン国際映画祭にてワールドプレミア、第55回金馬奨、第19回東京フィルメックスにて上映)
登場人物
韋布(韦布):彭昱畅
町で一番ひどい高校の生徒。同級生をかばって于成の弟・于帥を階段から突き落としてしまい、満州へ象を観に逃げようとする。黄玲に好意を抱いている。
于成:章于
チンピラ。親友の妻と不倫し、親友を自殺へ追い込んでしまう。弟の于帥を突き落とした犯人の韋布を探す。
王金:李从喜
娘夫婦に老人ホームへ入るよう催促されている。孫娘とは仲が良い。韋布を追う于成に巻き込まれてしまう。
黄玲:王玉雯
韋布の同級生。だらしない母親といつも揉めている。学校の主任教師とただならぬ関係。
あらすじ(※ネタバレ含む)
全てはどんよりとした朝から始まった。河北の小さな町に住む高校生の韋布は家族に叱責され、老人の王金は娘に老人ホームへ行くよう急かされ、チンピラの于成は友人の女を寝取り、黄玲は自宅のトイレの水漏れで母親と言い争っていた。
朝、于成が女の部屋にいたところに夫である友人が帰ってきてしまい、友人は窓から飛び降りてしまう。韋布は、同級生の黎凱をかばってチンピラ于成の弟・于帥を学校の階段から誤って突き落としてしまい、その場から逃げる。韋布は好意を寄せいていた同級生の黄玲に一緒に満州へ行くように誘うが断られた上、黄玲が主任教師とただならぬ関係である場面を目撃してしまう。黄玲は、主任との動画が拡散され、家に押しかけてきた主任夫婦をバットで殴り、韋布とともに満州へ行くことを決意する。王金は、鬱々とした老人ホームを見学して落胆、孫娘を連れて自分が軍隊で所属していた満州に行くことにする。
韋布は駅で満州行きのチケットを買おうとするが、ダフ屋に金を騙し取られてしまう。ダフ屋と揉めるが打ちのめされ、于成に引き渡されてしまう。于成に「屋上に立たされた時どうする」と聞かれ、韋布が「まだ何ができるか考える」と答えたことに心打たれ、于成は韋布を解放しようとするが、突如、黎凱に邪魔をされる。
于成によって逃された韋布は、黄玲と王金らと駅で合流するが列車は運休だった。深夜バスで瀋陽まで向かうことができるとは分かったが、王金は「どこに行ったところで同じ、ここで生きる事を学んだほうがマシ」だと諦めようとする。韋布は王金を引き止め、4人は、バスに乗り込む。どこからともなく、象の鳴き声が響くのであった。